わたしのヒストリー「私のいきがい」

 人生はたった一度と言われますが、その人の歩んだ人生は唯一のもの。その貴重な体験を「私のヒストリー」(ライフヒストリー)と題してご紹介します。

「私のいきがい」デイサービス利用
前田正子さん89歳(喜如嘉)

 私の生きがいは、体を動かし、人一倍働くことでした。そんな私が八十二歳の時、右足の骨を折ってしまったのです。五十四歳の時にも骨折を経験していたので、「骨さえくっつけば、すぐに歩くことができるようになる」と高をくくっていたのですが、治るどころか、年を追うごとに足は衰え、ついに自由に歩くこともままにならず、足だけでなく、言葉も思うように話せなくなってしまいました。

トーカチ祝い

トーカチ祝いの晴れ着姿

 何事にも人の手を借りず、すべて自分でこなしていただけに、もどかしくて仕方がありません。とはいっても、いきなり治るはずもなく、今は献身的に面倒を見てくれる娘たちに、感謝の気持ちでいっぱいです。

芭蕉を紡ぐ正子さん

芭蕉を紡ぐ正子さん

 私が一心不乱に働くようになった一つのきっかけは、長男の突然の死でした。それは東京の会社に勤め、成人式を間近に控えた四十五年前に起こりました。ただ一人の男の子であり、頼りにしていたし、生き甲斐でもあったので、そのショックは、とても言葉では表せない人生で最も辛いものでした。そんな苦しみを忘れるためでもあったのです。

トーカチ祝い

トーカチ祝いにかけつけてくれた家族

 夫を早くに亡くし、女手一つで四人の娘を育てましたが、その娘たちが今、私をやさしく支えてくれています。十四年前に娘や孫たちと行った大阪や京都への旅行は、楽しい思い出です。八十八歳のトーカチには那覇のホテルに娘や孫ら五十人程が集まり、祝ってくれました。その時、孫たちは「オバア、カジマヤーも盛大にやろうね」と言って励ましてくれました。今は娘四人、孫十二人、ひ孫十二人ですが、そのころには玄孫もできているかもしれません。それを励みに頑張って生きてみようと思っています。

聞き書き 重光正則(次女の夫)

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